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犬に食わせろ(10首)
・兄は雲丹、知を司る。弟は野薔薇、怒りとは彼の別名。・笑いものにされた絵具で描かれた果物ゆえに(その寓意より)はやく萎びる
・頑迷な警察官 それは出会い頭の郵便事故と認めようとしない
・木漏れ日に眠る仔馬は玻璃張りの膚の少女にあたま預けて
・ジェラートの時計回りに渦を巻き押し流される蟻のいくつか
・心臓など犬に食わせて掌に載る大きさの石でじゅうぶん
・太陽の赤・六に月の白・四を重ねて西瓜は真夏を産んだ
・晩秋のきび砂糖が柿の実の陽ざしの中で風に固まる
・知に汗を、力に学びを、皮膚の奥に心は入れずに拵えあげた
・実る前に枯れるものあれば実る前を愛でるものもある秋の庭