……同人誌を、それも印刷会社に入稿するようなたぐいの同人誌をつくるときに必要なものとはなんでしょうか。なんとしても同人誌をつくろうという情熱? もちろん重要です。萌え? 特に二次創作の場合は、これも欠くべからざるものと思料されます。表現上の技術? あったほうがいいにこしたことはないですが、これは必ずしも必要ではありません。商業作家でも、テクニカルでない字書きはいくらでもいますから。
それ以上に欠くべからざるものがあります。いったいそれはなんでしょうか。胸に少し手を当てて考えてみれば、きっとみなさん、すぐに思い当たることでしょう。すなわち、「表紙」と「本文」です。たとえどれだけすばらしいねたがあっても、たとえどれだけ端麗で詩的な一文が頭のなかに浮かんでいてもあっても、それを書き起こしたものがなければ、2020年現在、同人誌をつくることはできません。
恐れながら、これは、電子書籍についても同様かと思います。紙媒体・電子媒体にかかわらず、表紙・本文のいずれもがそろわなければ、本という体裁にはならない、ということは、おおよそご同意いただけるでしょう。(むろん、会報など表紙のない本もありますが。)
本書では、筆者が五年以上にわたって培ってきた、同人誌および電子書籍を作る際のノウハウ、というか、注意事項を一冊にまとめたものです。本書の特徴は、とにかく当たって砕けろ精神で、右も左もわからない中から同人誌や電子書籍をつくっていったという筆者の姿勢に基づく、失敗談と、ではどうすればよかったのか、という回答を含んでいることでしょうか。そういう意味で、「マニュアル」と銘打ちはしましたが、マニュアルとガイドとエッセイの混淆する場所にあるテクスト、というほうが適切かもしれません。
内容も、あくまで基本のきが書かれた、入門中の入門編。これまで同人誌や電子書籍を一度もつくったことがないけれどもつくってみたい、という皆様、あるいは、同人誌をつくりたいけどむにゃむにゃ迷っているご友人を同人誌制作の沼に落としたい方を「タゲ層」にして、本書は執筆されています。少しでもそういう皆様のお役に立つことができましたら幸いです。(なお、各章のはじめにも書きましたが、筆者は現在、表紙作成にはPhotoshop CS2、本文作成にはMicrosoft Word、epub作成にはAozoraEpubを使用しております。ほかのソフトをご利用の方には、あまりご参考にならないかもしれません。ご了承ください。)
なお、「第一版」と銘打っておりますように、新しく思いついたこと、気づいたことなどがございましたら、都度々々バージョンアップをかけていく予定です。お気づきの点、疑問点、筆者の認識誤りなどございましたら、お気軽にcontact@rokuehiroaki.infoまでお寄せください。「はじめに」
目次
- はじめに
- 同人誌をつくる
- 1.表紙作成編
- ▮1-1 表紙作成ソフトの導入
- ▮1-2 画像解像度について
- ▮1-3 表紙画像の準備
- ▮1-4 RGB/ CMYK
- ▮1-5 判型の決定
- ▮1-6 製本方法およびカバーの有無の決定
- ▮1-7 印刷部数および印刷方法の決定
- ▮1-8 印刷会社を探す
- ▮1-9 PP加工とはなにか
- ▮1-10 入稿予約をとる
- ▮1-11 表1/表4を作成する(Photoshop CS2の場合)
- *1-11-1 表紙にまつわる用語について
- *1-11-2 レイヤーとはなにか?
- *1-11-3 表1および表4のサイズについて
- *1-11-4 カンバスサイズの変更
- *1-11-5 Photoshopでのトンボの入れ方
- *1-11-6 ヒストリーウィンドウ
- *1-11-7 色を塗る
- *1-11-8 画像を貼る
- *1-11-9 文字を入れる
- *1-11-10 図形を描く
- *1-11-11 レイヤーの考え方
- *1-11-12 背景を透過する
- *1-11-13 レイヤーの複製/レイヤーの背景化・背景のレイヤー化
- *1-11-14 複数のレイヤーの開始/終了位置を同じにする
- *1-11-15 不透明度をうまく使おう
- *1-11-16 パターンの定義
- *1-11-17 線画を別の色に置き換える
- *1-11-18 グレースケール
- *1-11-19 Photoshopから.pdfの書き出し
- *1-11-20 Photoshopは.pdfファイルも読み込める
- *1-11-21 レイヤー統合前には必ずバックアップを
- *1-11-22 箔押し!
- *1-11-23 R18作品の表紙について
- *1-11-24 まとめ
- ▮1-12 表1-4を作成する(Photoshop CS2の場合)
- ▮1-13 カバーを作成する(Photoshop CS2の場合)
- 2.本文レイアウト編
- ▮2-1 .pdf作成ソフトの導入
- ▮2-2 フォントの選択
- ▮2-3 「游明朝」事件
- ▮2-4 余白を設定しよう
- ▮2-5 セクション区切りについて
- ▮2-6 ページ番号を設定しよう
- ▮2-7 「ルビ」と闘う
- *2-7-1 ルビを振っても行間を一定に保つ
- *2-7-2 ルビと文字の間を一括で調節する
- ▮2-8 「Segoe Ui Emoji」と闘わない
- ▮2-9 Word文書と画像の関係
- *2-9-1 Word文書に画像を挿入したい際の注意点
- *2-9-2 画像の裏側に文字が回り込んでしまうとき
- ▮2-10 文字列を上下左右中央に配置する
- ▮2-11 実は「使える」見出し機能
- ▮2-12 スタイルを有効活用しよう
- ▮2-13 縦書き文書の憂鬱
- ▮2-14 ハイパーリンクの一括変換
- ▮2-15 脚注のつけかた
- ▮2-16 索引のつくりかた
- ▮2-17 奥付には何を書くべきか?
- ▮2-18 いざ、入稿へ
- 電子書籍をつくる
- ▮3-1 本書における「電子書籍」の定義について
- ▮3-2 主な縦書き対応の.epub作成ソフト
- ▮3-3 AozoraEpubを使う
- ▮3-4 .epubをいじる
- *3-4-1 html/css
- *3-4-2 .epubを解凍する
- *3-4-3 目次からリンクを張る
- *3-4-4 本文を天地左右中央寄せにする
- *3-4-5 脚注のつけ方
- *3-4-6 再度.zip化する
- ▮3-5 端末での挙動を確認する
- ▮3-6 epub to pdf
- ▮コラム:主な環境依存文字とその文字コード
- つくった本を届ける
- ▮4-1 つくった本を頒布しよう
- ▮4-2 イベント(対面式)で頒布する
- *4-2-1 文章系同人誌を頒布可能な主なイベント
- *4-2-2 イベントに申し込む
- *4-2-3 試験に出ない! よく使われるイベント会場2TOP
- *4-2-4 イベントに必要なもの
- ▮4-3 通販/オンラインイベントで頒布する
- *4-3-1 通販会社に販売を委託する
- *4-3-2 BOOTH/BASEなどで自家通販する
- *4-3-3 エアイベントで頒布する
- *4-3-4 一版書店に委託する
- ▮4-4 Amazon Kindle書籍としてリリースする
- ▮4-5 ダウンロード販売をする
- ▮4-6 Amazonマーケットプレイスで販売する
- ▮4-7 国立国会図書館に納本する
- ▮コラム:ロクエヒロアキ作品の二次創作について
- おわりに
- 加筆修正履歴
- 紙書籍版仕様
販売サイト
初版発行日
- PDF:2020年12月10日
- mobi:2020年12月10日
- 書籍(A5版):2021年3月1日
頁数
- PDF:116p
- 書籍(A5版):120p(表紙回り4p含む)
発行元
- PDF:6e
- mobi:6e
- 書籍(A5版):6e
備考
昨日アップいたしました、BOOTH発送完了通知自動作成シートですが、まだ関数化できる記述がよく見たらいっぱいあったので、R2を公開いたしました。
恐れ入りますが、最新版をお使いいただけますと幸いです。
BOOTHの売上管理と送り状作成の紐づけができるエクセルシートを作成いたしました。
ぜひご用立てていただければと思います。
❖「管理簿」シートに、「ご購入者のお名前」「敬称」「BOOSTの有無」「ご注文番号」「ご注文内容」「発送方法」「追跡番号」を入力すると、自動でこのような形で「発送完了通知」シート出力されます。
❖B1セルの数字を1、2、3……と変化させていくと、管理簿の通し番号1、2、3……のデータが自動で出力される形式です。
❖文面についてはご自身でご作成いただいたものもお使いいただけます。
※本エクセルシート作成にあたっては、「レターパックの宛名印刷用無料テンプレート【EXCEL版】」(https://ad-ology.com/letap-template/)様から多大なご示唆を賜ったことをお伝えするとともに、厚く御礼申し上げます。
WordPressのサイドバーに月別アーカイブを設定したのはいいが、月をクリックして一覧ページに飛ぶと、なぜか右寄せになってしまうという問題が発生している。通常のページではこの問題は起こっていないことから、何か月別アーカイブに関するところで、悪さがなされていることは容易に思料された。
とりあえず状況を整理しておこう。書き加えた記述は以下のとおりだ。まず、sidebar.phpに、
<details>
<summary>MONTHLY ARCHIVES</summary>
<ul class=”ul-sb”>
<?php wp_get_archives(‘show_post_count=1’); ?>
</ul>
</details>
つづいて、function.phpに、
//記事数をリンク内に表示
add_filter( ‘get_archives_link’, ‘my_archives_link’ );
function my_archives_link( $output ) {
$output = preg_replace(‘/<\/a>\s*( )\((\d+)\)/’,’($2)</a>’,$output);
return $output;
}
//
以上である(註1)。
まず、筆者が疑ったのは、出力先ページが必要なのではないか、ということだ。すなわち、月別アーカイブは、archive.phpではなく、何か別のphpファイルを参照して反映されるものであるという――。そのファイルの不在が、斯様な事態を招いているのではないか?
Google検索を利用した調査の結果、どうやらdate.phpというphpファイルが必要なのではないか、という結論に至り、archive.phpをコピーし名前をdate.phpに変え、テーマ内にアップロードした。しかし、これによる効果はなかった。
次に筆者が目をつけたのは、rtl(right to left)に関する記述が悪さをしている可能性である。なにかが原因で、rtlに関わるcssを読み込んでしまっているのではないか? しかし、当サイトでは、アラビア語など右から左へ読む系の言語は使用しておらず、今後も使用の予定はない。幸いにして、rtlに関わるcssは削除してもよい(註2)と読める記載を発見、早速実行に移した。しかし、これによる効果はなかった。
次に筆者が行ったのは、あまりにも大胆で端的な方策であった。すなわち、date.phpのページ全体を<div align=”left”>でくくるというものである。なるほど、これには確かに効果が見られた。しかしながら、これは、二階堂奥歯の言葉を借りれば、〈問題を解決するのではなくて解消する〉(註3)手法ではないのか。あるいは、効果が確実に認められる治療ではなく、対症療法である、と言ってもいいが。
こんなんでよいのだろうか? しかし筆者は、これでよしとすることにした。いわゆる、「今後の課題としたい」というやつである。解決策をご存知の方におかれましては、ぜひ筆者までご連絡いただきたいが、近々に自身の力で解決するには限界があると判断した。白鳥も、水面上での端麗さとは裏腹に、水面下では必死でばた足をしていると聞く。すなわち? ソースはともかくレイアウトがある程度理想通りになれば、あきらめも肝心だ、ということだ。
なお、本稿のタイトルは、言うまでもなく横光利一「春は馬車に乗って」のもじりである。現代日本において想定される「馬車に乗ってくるもの」はなにほどか優雅さの伏線を張るが、サイトの意図しないレイアウト崩れは、そういう情緒とはおおきな懸隔がある、という「意図」を込めた。「春は馬車に乗って」というテクストを愛する方々は、どうぞご寛恕願いたい。
- 註
- (註1) sidebar.phpおよびfunction.phpの記述事項については、「【WordPress】月別アーカイブ一覧で、投稿数を表示する方法」(https://recooord.org/wordpress-archives-month/) を参照した。(二〇二〇年一一月二四日閲覧)
- (註2)「WordPressの不要なファイルを全て削除する」https://ecsiter.com/wp_files (二〇二〇年一一月二四日閲覧)
- (註3)二階堂奥歯「八本脚の蝶」 http://oquba.world.coocan.jp/notes/oquba005.html (二〇二〇年一一月二四日閲覧)
とある企業のHPを想定していただきたい。シンプルなつくりのHPである。メニューは4つくらいぽんぽんぽんと並ぶばかりで、コンテンツは一見、それ以上でも以下でもないように見える。けれども、たとえばあなたがその企業に就職を志すわかものであり、会社概要を知るべく、「ABOUT」のボタンをクリックすると、ふいにその下に「企業理念」「グループ企業」「沿革」「アクセス」などへの隠れていたリンクがあらわれる。もはやそういうサイトは、決してめずらしいつくりのものではない、と言っていいだろう。
「隠しメニュー」と筆者は呼んでいたが、それには「アコーディオンメニュー」乃至は「折りたたみメニュー」という「正確な」名前があるらしい。外観がすっきりしていいよね、アコーディオンメニュー。というわけで、これを弊サイトにも実装すべく、筆者はGoogle検索の小窓をたたいた。
まず、非常に多く見られたのが「jQueryを使ってアコーディオンメニューをつくる」というものだった。しかし筆者はhtmlを多少齧ったことがある程度で、phpは、スープになぞらえるならスプーン約半分にも満たない量をおそるおそる啜った程度にすぎない。腹がくちくなるどころではないのに、「じぇーくえりー」などというものを使うのは、少々以上に骨が折れる作業になることが予想された。(なお、まったくの余談であるが、筆者はいまだにGitHubがいかなるものなのか理解していない。)
けれども、検索結果のなかには、「htmlとCSSだけでアコーディオンメニューをつくる」というものも散見された。それなら、わからないでもない。まあ、多少は。htmlを利用したホームページならこれまでもつくっていたし。そういうわけで、そのうちのいくつかを試みてみた。なぜ「ひとつ」ではなく「いくつか」か? サイトの記述のとおりにhtmlおよびCSSを作成したつもりであるのに、アコーディオンメニューの完成がかなわなかったからであることはいうまでもない。
筆者は敗北した。Wordpressとの闘いに敗北に敗北を喫した。もうここは撤退のラインではないか――そんなときに筆者は、偶然ひとつのサイトに至りつく。それが、「1行で書く!折りたたみメニュー!!」というサイト(註1)であった。当該サイトの記述を鵜呑みにすれば、htmlで、<details>というタグで「くくるだけで」、簡単にアコーディオンメニューができちゃうよ、とのこと、そんなうまい話があるのか? 半信半疑で筆者は、サイドバーに以下のような文字をつづった。
<details>
<summary>ABOUT</summary>
このサイトについて
</details>
なお、「以下のような」とあるように、筆者がつづったのが「このサイトについて」だったのか「ロクエヒロアキについて」だったのか、はたまたそれ以外の文言だったのかは、一切記憶にない。もちろんこれは枝葉末節なのだから、筆者の記憶にないことなどなんの問題にもなりはしない。ともかく筆者は、おそるおそる「ABOUT」にカーソルを合わせ、クリックした。
あれ、できちゃった。
そう、二〇二〇年ともなれば、「じぇーくえりー」などのお力を借りなくても、隠しメニュー、失礼、アコーディオンメニューの作成はできるのである! ただし、IEなどにおかれましては非実装らしいが、筆者が使っているブラウザはGoogle Chromeなので、なんら問題はないと言っても過言ではない。
というわけで、アコーディオンメニューのサイトへの実装をお考えの方は、detailsおよびsummaryタグを使うのがおすすめだ。ちなみにリンク付きのリストも無事格納できたし、なんかクリックすると文字の周りに出てくる変な枠線も、CSSに、
details > summary {
border: none;
list-style: none;
margin: 0;
padding: 0;
outline: none;
}
と記載することで削除できる(註2)。
アコーディオンメニュー、導入したいけどむずかしそう……と二の足を踏んでいた方は、ぜひ<details>タグをお試しいただきたい。