たとえば、なにかつらいことがあったときに空を見上げる、というのは、小説内の記述においてなら、常套化していると言っていいものかもしれません。ですが、もちろん、ひかえめに考えても、そのとき空に罪はない、と言えるでしょう。だいいち、目の前が真っ暗なときに、前より遠くすらも見ることが許されないのだとしたら、いったい視覚というものは、なんのためにあるのでしょうか。どんな短距離走でも、ゴールと言うのはここにはなく、数秒以上ぶんの時間の先にあるものです。べつの言い方をするのなら、「そこ」というのは、そもそも「今」ではなく「未来」の領域であると言うことが可能になるのではありませんか。「未来」を本質的に凝視めるのが眼球の機能ならば、空くらい見たってなんのことはない、と言っていいのではないかとわたしは思うのです。
「失色ブルー」
収録作品
- 「味噌汁残高」
- 「平面日」
- 「青の時代」
- 「粉々に砕かれた未来のために」
- 「罰の味」
- 「トイレの神様」
- 「しおどき」
- 「失色ブルー」
販売サイト
初版発行日
- PDF:2020年4月1日
- mobi:2017年11月1日
- 書籍(文庫):2017年4月1日
頁数
- PDF:177p
- 書籍(文庫):188p(表紙回り4p含む)
発行元
- PDF:6e
- mobi:6e
- 書籍(文庫):6e