太陽を好む複数の惑星
少年たちを乗せた汽車が、ファースト・ターミナルへと到着する。
目を覚ましたのは水星であった。繭のなかからからだを出すと、彼は四つん這いになって他の繭たちのあいだを縫ってドアーのところまでゆき、下方につけられたノブを押す。ドアーの隙間から、びゅう、と冷たい風が吹きつけてきて、水星は思わず目を閉じた。そのまま這うようにして外に出て、雪のなかに鞠のように転がり落ちる。まぶたが冷たい。睫毛も。それから心臓も。いずれも、あるとすればの話であるが。
「太陽を好む複数の惑星」より「水星」
収録作品
- 太陽を好む複数の惑星
- 水星
- 金星
- 地球と月
- 火星
- 木星
- 土星
- 天王星
- 海王星
- 冥王星
- 幻談(2015)
- 天井をささえる男の話
販売サイト
初版発行日
- PDF:2020年4月1日
- mobi:2017年9月30日
- 書籍(文庫):2017年4月1日
頁数
- PDF:111p
- 書籍(文庫):120p(表紙回り4p含む)
発行元
- PDF:6e
- mobi:6e
- 書籍(文庫):6e
備考
- 幻想小説