ひらがなのふたり
男の二人暮らしになんて、カラフルな爪楊枝は必要ないだろう。そう思ったゆきは、ちょっとだけ眉間に皺を寄せると、結局のところそれを、買い物かごのなかに抛り込んだ。なんと言ってもさなたはきっとこういうものが好きだろうし。前歯をせせるのにはいささかお上品にすぎるが、そもそもゆきやさなたの年代だと、そんなものは使わないか、使うとしても類似の高性能品(デンタルフロス)である。チーズとか、たこさんウインナーとか、ミートボールとかに「むだに」(とはもちろんゆきの思惑)刺して使う。そんな「むだ」にこころを配るのは、なんと言っても、ゆきが、さなたの喜ぶ顔が好きだから――などという言い方は、いささか簡にして要を得ていない。そうであるからこその「眉間の皺」である。
「爪楊枝の色」
収録作品
- ひらがなのふたり
- 爪楊枝の色
- 麻婆飯
- ひらがなのふたり
- 大判焼小路
- 桜の下で男(もしくは男)
- お茶を淹れる
- 未開の大地
- 春巻きの皮(すなわち、揚げるまえに包むもの)
- スパイスの誘惑
- 気づいたら卵焼き
- 平行線
- オーロラソース
- 古い油
- 木べらと青春
- WATCHING A MOVIE WITH SOME SNACKS
- ゆきあらし
- 突然炎のごとく
- 霙花
- 海・オンデマンド/花火・オンデマンド
販売サイト
初版発行日
- PDF:2020年4月1日
- mobi:2016年4月15日
- 書籍(文庫):2017年4月9日
頁数
- PDF:82p
- 書籍(文庫):86p(表紙回り4p含む)
発行元
- PDF:6e
- mobi:6e
- 書籍(文庫):6e
備考
- BL
- 連作掌編集